怒っても褒めても結果は同じ
著者、ダニエルカーネマンがイスラエル空軍の訓練教官に心理学の指導をしているときに、イスラエルの教官はこう言った。うちの方針は、「めちゃくちゃ叱って鍛え上げることです」と。言い分としては、下手くそな操縦をした訓練生はマイクを通じて怒鳴りつけると、大抵次はうまくいくらしい。なので、教官たちは「だから叱るべきだ」と主張。しかしカーネマンはこれについて、「パフォーマンスの出来、不出来は、誉め言葉や叱責とは関係がない」と述べる。その根拠が「平均への回帰」だ。
教官の言い分
教官には理由があった。どうやら、、いいパフォーマンスをとったあとは、折角褒めても次のパフォーマンスは悪くなったようだ。一方で、パフォーマンスが悪かった時、その後めっちゃ怒ったら、なんと動きは良くなった。だから、「教育は怒った方がいい」という結論に至った。
平均への回帰
人はいつも一定のパフォーマンスが出来るわけではない。日によって出来不出来はある。めっちゃ良いパフォーマンスをした後は、当然、平均に戻る(=次は悪くなる)。一方、めっちゃ悪いパフォーマンスをした後も、当然、平均に戻る(=次は良くなる)。なので、怒られたから次が良くなった訳でもなく、褒められて調子に乗ったから次が悪くなった訳でもない。ただ単に、「平均に戻る」という自然の摂理に基づいた回帰が起きただけである。これを見誤ってしまうのが、「システム1」の特徴。良く考えずに、何でもかんでも、「因果関係」があると錯覚する。そして、それは「無意識に」起きてしまうのが、システム1。この場合教官は、単なる自然現象(=平均に戻っていった)を、「褒めたから」とか「怒ったから」の叱咤激励が、結果に影響を与えていると思ってただけだった。そうさせてしまうのが「システム1」、、「勝手に因果をつくる」。これも無意識に起きるから怖い。
怒るも褒めるも関係ないなら
心理学の世界では、一般的には「褒めた方がその人は伸びる」というのは、実験から明らかになってるようだ。とはいえ、このファストアンドスローで述べられているように、別に、褒めても、怒ってもどっちでも変わらんとなれば、「褒めた方いいじゃん」って思ってしまいそう。しかし、私はこれを読んで、むやみやたらと褒めまくるってことよりも、「一回一回の出来不出来に囚われず、パフォーマンスの平均値を上げる」ことに、冷静に着目しろってことを言いたいんだなと読み取った。なんか、受験勉強の時も、一回のテストで一喜一憂するな!いわれてたなぁ。