問題①:バットとボールは合わせて1ドル10セントです。バットはボールより1ドル高いです。ではボールはいくらでしょう?
きっとのあなたの脳裏には「10」と言う文字が走ったことだろう。こんな簡単な問題だ。一瞬に答えられるはず。当然だ。
「直感:システム1」と「熟考:システム2」
人間の認知の仕組みには2つのシステムが存在する。
- システム1(早い思考=ファスト)
- システム2(遅い思考=スロー)
の2つだ。この本の題名となった理由はこれ。
システム1は「直感的」「早い」「簡単な」思考をつかさどる。この高速の思考はとても優秀で、「1+1」の答えを一瞬で出せたり、ドアを開けた瞬間静まり返る部屋・・・そして直感で気がつく・・「あ・・俺の話してたな・・」と。また、電話で上司の声を聞いてこう思う・・「お!今日は機嫌良さそうだな!」と。このような、高速で直感的に、そして簡単な判断をするのが「システム1」。もはや、「無意識」「反射」の域に達する。一方で、「熟考的」「遅く」「複雑な」思考をつかさどるのがシステム2。「17✖️24」の答えが一瞬で出せず熟考したり、複雑な論理をじっくり考えたり、慎重に申請書に書いたりする時に発動される思考だ。
人間の本能的には「システム1」優勢
この2つのシステムにはさらに大きな違いがあって、それは「システム1」は常備活動態勢になっているにも関わらず、「システム2」は怠け者。意識しないと発動されない。ここがこの本がめちゃくちゃ言いたいことのようで、「実際めっちゃ考えて判断するべきところなのに、システム1でちゃちゃっと答えを出しちゃって、結果自分は合理的に判断したと思っていても、実は間違っている」ってことが、脳の構造上起きるってことだ。生きている上でもこんなことがよく起きるだろう・・・。「よくよく考えてみたら、それ違うよね・・・」ってやつ。でも最初は自分は「合っている」と思って判断した。しかし、よく考えてみると違った。その現象は、自分がアホなんじゃなくて、脳の構造上の問題だった。
答え合わせをしよう
問題①:バットとボールは合わせて1ドル10セントです。バットはボールより1ドル高いです。ではボールはいくらでしょう?
この答えは「0.05ドル」つまり、5セントだ。
X +Y=1.1ドル/X-Y=1ドル ってことは、
2Y=0.1ドル Y=0.05ドル
この問いの場合、一瞬10セントと頭をよぎる。それは「直感」つまり「システム1」だ。でも、よくよく考えてみると答えは違う。そこで使われた思考が「システム2」。一瞬で判断する「システム1」と、意図的に発動される「システム2」。そして、結果的に「システム1」で出した答えは間違ってて、熟考した結果があっていた。この問題に「5セント」と答えた人は、システム2で「熟考」したと思う。
直感に従った動きにとらわれ、結果間違うことが、こうして立証された。これが人間の認知の仕組み。「システム1」が優勢で、直感で決めてしまう、まさにその瞬間、間違いが起こる。そして、タチが悪いことに、本人は合理的な判断をしたと思っている。