2023年07月24日の備忘録
我々はインドの太陽光発電産業に何としてもかじりつきたい
ここ2年ほど、我々インドチームでは、会社として旬な「グリーンアンモニア事業」に加え、めちゃくちゃ頑張って参入を試みている産業がある。それが、「インドの太陽光発電産業」だ。今日は、我々が、何故インドの太陽光発電産業に何とか食らいつこうとしているのかを簡単に説明したいと思う。
インドの再生可能エネルギー
インド共和国のナレンドラ・モディ首相は、国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で、2070年までに温室効果ガス純排出「ゼロ」を達成する旨を表明された。
現在、インドの総発電量の大部分は石炭を中心とする火力発電に依存しており、大型水力発電を含む再生可能エネルギーによる発電比率は37.9%にとどまる。国際エネルギー機関(IEA)によると、インドにおける二酸化炭素排出量は23億7189万トン(2019年)と、全世界では中国、米国に次いで第3位である。
インドでは、急激な人口拡大と経済成長よって、電力不足が深刻な問題になっている。人口が膨張する農村部では3~5憶人以上が電気を利用できずに生活し、さらにはバンガロールやムンバイといったIT産業が発達した大都市でさえ、日常的に数時間の停電が起きている(私のアーメダバードの家では、基本毎日停電する)。原因として挙げているのが、総発電量不足、盗電、送電線伸長に伴う電力量の消耗、それに輪をかけるのが石炭不足による発電縮小である。
インドの総発電量は中国、米国に次ぐ世界第3位である。2019年は3億7000万KWのうち、石炭火力が約57%、再生エネが20%、水力13%、ガス火力7%、原子力2%という発電比率である。これを2030年までに、再生エネ割合を20%から40%まで引き上げようという壮大な目標を設定している。すなわち約 74GKWの太陽光発電ならびに風力発電設備を全国に増設すことでエネルギー確保に向けた問題点を解決しようとしている。
インドは日照時間が長い
インドの首都ニューデリー(北緯28度)と、日本では日照時間が大きいとされる福岡県(北緯33度)とを比較してみた。ニューデリーの天候区分は前記のとおりステップ気候で、7~9月の雨季に入っても比較的、日照が確保できる。福岡市と比較すると約150%ほど日照時間が長く確保できる。つまり、太陽光発電にもってこいの土地柄といえる。
太陽光パネル(別名モジュール)の構造
太陽電池とは、電力を蓄える一般的な「電池」ではなく、太陽光エネルギーを電力に変換する「発電機」のこと。太陽の光が太陽電池に当たると、「光電効果(こうでんこうか)」と呼ばれる現象が起こる。
太陽電池に光が照射されると、n型半導体にはマイナスの電気を帯びた「電子」が、p型半導体にはプラスの電気を帯びた「正孔(せいこう)」が集まり、プラス極とマイナス極が形成される。すると、電子が導線を伝わって移動するようになるため電気の流れが生じます。これが太陽光発電で電気を発生させる仕組み。この電気を如何に効率よく、沢山得られるかというところが、太陽光モジュールに必要不可欠なテクノロジーとなる。
ソーラーモジュールの構造は、簡単にいうと下記の様な構造をしている。
FrontGlase
合わせガラスを使用した採光型の特殊ガラス。ガラスの採光性と耐久性に重視した材質なので、高耐久性を備え、長期間の使用が可能。
Cell
太陽電池モジュール部品の最小単位で、一般的には半導体で構成される。モジュール内部にはCellを敷き詰め、ガラスやEVAで固定し、アルミ枠にはめる込んで1枚のパネルにする。
EVA
エチレン酢酸ビニル共重合樹脂。セル、ガラス、バックシートを接着させる封止材。両面ガラスモジュールでは透明度の高いEVAの使用により、より高い光透過性を得ることができる。
BackGlase(BackSeat)
合わせガラスを使用した採光型の特殊ガラス。シートを使用する場合は太陽光線の透過がなく、風雨に耐えうる商品が必要となる。
太陽光発電と言えば、昔は日本!今は、中国。
かつて、太陽光モジュールの生産で名乗りを上げていたのは、実は日本だった。1997年における世界太陽電池の年間出荷量におけるトップ10メーカーと2017年のリストを比べてみる。1997年には、日本企業の京セラ、シャープ、三洋電機(現パナソニック)の3社がトップ10に入っている。しかし、1997年のリストのうち京セラとシャープの2社以外の会社は太陽電池事業を停止したか、他の企業に事業を売却している。さらに、1997年において、トップ10メーカーの製造拠点は日本、欧州と米国であったが、2017年にはトップ10メーカーの製造が中国、台湾、マレーシア、ベトナム、韓国、タイ、そしてドイツとより分散化している。
現代の2023年では、世界のソーラーモジュールの生産量が多い国は中国。2022年には、中国は世界全体のソーラーモジュールの約60%を生産しだといわれている。2位は台湾で、約10%の生産量を占めている。3位はベトナムで、約8%の生産量を占めている。中国は、太陽光発電の製造コストが低いため、ソーラーモジュールの生産量が世界一となっている。また、中国政府は、太陽光発電産業の育成を積極的に支援しており、その結果、ソーラーモジュールの生産量が急増した。
今、世界で起きているソーラーモジュールを取り巻く情勢
インドはモジュール自国生産を目指す
インドは、国策としてソーラーモジュールを仕入れし、太陽光発電を活性化させ、太陽光発電による再生可能エネルギーの割合を増やさなければならないのは前述の通り。
しかし、そこに新たな時代の流れがやってきている。それは、今まで中国のソーラーモジュールを輸入する事に頼っていたインドは、自国でモジュールを製造する方針に切り替わっていること。
また、インド政府は、再生可能エネルギーの発電拡大によりインドの自立を促進すべく、中国からの輸入を阻止するため、2022年4月に太陽光パネルに40%の輸入税、太陽光モジュールの「セル(パネルに敷き詰められている青い部分)」に25%の輸入税を課した。更に、PLIスキームという補助金制度も設け、インドでモジュールを作る企業に補助金を出す。
PLI スキーム
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/04/b361352ff5a9bfaf.html
インドのPLIスキームとは、生産連動型インセンティブスキーム(Production Linked Incentive Scheme)のことです。インド政府が、特定の産業分野に投資を促進するために導入した制度です。PLIスキームでは、対象となる企業が一定額以上の投資を行った場合、政府から補助金を交付します。これにより、企業は投資を回収しやすく、製造業の振興を図ることができます。
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/04/b361352ff5a9bfaf.html
更には、モジュールの組み立てだけでなく、「セル」「ウエハ」「インゴット」「ポリシリコン」と、ソーラーモジュールを完成させるまでの、「全てのサプライチェーン」をインドでやってしまおうという方針を打ち出す企業も登場している。可能な限り、中国に頼らずに生産してやろうという試みだ。
その代表例が、「アダニグループ」の傘下「アダニソーラー」や、インド財閥大手「リライアンスグループ」だ。
アメリカは、中国のソーラーモジュールに規制
2022年、世界で最もソーラーモジュールを仕入れたのは米国。米国は、2022年に約27GWのソーラーモジュールを仕入れしたと言われている。これは、世界のソーラーモジュール市場の約25%を占める。米国は、太陽光発電の導入量が世界で第1位であり、ソーラーモジュールの需要も高い。また、米国政府は、太陽光発電産業の育成を積極的に支援しており、その結果、ソーラーモジュールの輸入量が増加している。
アメリカは、中国のソーラーモジュールへの輸入制限を実施している。これは、中国のソーラーモジュールが過剰生産で地球のソーラーモジュール市場を支配していることを理由としている。具体的には、アメリカは2018年に中国のソーラーモジュールに追加関税を課し、2021年には輸入量を制限した。この輸入制限は、中国のソーラーモジュールメーカーに大きな打撃を与えたが、アメリカの太陽光発電産業も、中国からの安価なソーラーモジュールに支えられていたため、困難な状況に陥っている状況である。アメリカと中国は、現在、輸入制限の解除に向けて交渉を続けているが、交渉は難航しており、輸入制限がいつ解除されるかは分からない。
更には、アメリカが中国に対して課した太陽光モジュールに関する規制は、ベトナム、タイ、カンボジアにも飛び火しようとしている。何故なら、中国製モジュールの輸入規制の抜け道の如く、「セル」を中国から輸出、そして、第三国でモジュールの組み立てを行うのが一つの抜け道トレンドだった。しかし、それすらも今後規制が掛かるようになる。
アメリカの輸入制限は、中国のソーラーモジュール産業だけでなく、世界全体のソーラーモジュール市場に大きな影響を与えている。その為、世界のソーラーモジュールの価格は上昇し、太陽光発電の導入が遅れる可能性がある。
アメリカの政策に関する資料
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2023/f21b8789fbc9baa0.html
インドは自分たちで作ります〜アメリカは中国、その関連国からモジュール買いません〜・・・ってことは、、これ、インドからしか買わないじゃん!
そこで出てきたのが、これから世界の工場となり得る「インド」である。
前述の通り、インド自体も中国からのモジュール輸入を規制し、自国でのセル生産、モジュール組み立てに舵を切り換えている。
更には、中国モジュールの得意先であったアメリカも、需要が大きいにも関わらず、中国のモジュールを購入しにくくなっている。
なので、インドでの自国における太陽光発電が必要なのにも加え、アメリカから、インドへの太陽光モジュールのオーダーが今後劇的に増え、インドに「一大太陽光モジュール製造産業」が生まれると予測されている。インドのソーラーモジュール工場によっては、アメリカのモジュール工場と合弁会社を立て、アメリカに工場を立てら構想もある程だ。
日本にもチャンスあり
前述の通り、太陽光発電産業は、中国が現在の世界の市場を握る前は、元々日本が席巻していた。その技術移転が中国に行われ、そのまま中国に吸収され、日本はこの産業から退いた。そして、日本は太陽光発電から半導体へ舵を切った。だが、当時の日本の技術は未だに残されている。その技術やノウハウ、はたまた、太陽光モジュールの製造に必要な原料を、インドに紹介していくには、まだまだこれからチャンスがあると見ている。そして、インドの今後のソーラーモジュール産業に必要とされている原料は、日本だけでは足りていない。日本だけでなく、諸外国からの輸入もかなり魅力的な産業だ。また、逆も然り。インドのソーラーモジュールを「中国製を嫌う国」へ、プロモーションしていくことも、非常に未来があるビジネスに見える。※日本は中国製ソーラーモジュール輸入国・・・昔は、日本の産業だったのに・・・。
我々、インド店が大きくジャンプアップ、また、弊社グループが躍動する為に、今まさに、インドの太陽光モジュール産業に全力で行く必要がある。これを逃したら、相当後悔すると思う。