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備忘録

Indianlife

775回目:PEACE INDIA COTTON ①

11月28日~11月30日にかけて私はインドのハイデラバードから南に300キロに位置する「テランガナ州のガドワーレ」から更に1時間車を走らせ、「ナガルドーディ」という村に向かっている。朝6時に前泊していたハイデラバードから片道4時間をかけ車を走らせる。唐辛子畑とコットン畑を横目に、ついに道の脇に我々が立てた看板が見えた。コロナの影響で訪問は2年ぶり。農民たちは元気にやっているだろうか。

ここでは、8年前から弊社のSDGsプロジェクトの一環で、「PIC(PEACE INDIA COTTON)」プロジェクトというものを行っている。これは、弊社が農民たちに、有機栽培コットンの種を配り、農民たちに有機栽培農法を教え、その収穫物を農民から購入し、そして加工し、最終的には弊社の小売商品に商品化された、一連のサプライチェーンの追跡が可能となるモデルを目指すもの。本日は、2年ぶりの訪問ということで、農民たちの溜まった不満を聞いてあげて、そして、安心させるということを主目的とし、そして、農地の土壌を調査し、今後のコットン栽培の改善策を模索するために来た。

インドの農民は借金をして種を買っている

私達としては、「種ぐらい自分で買えるだろう」と思うのも無理はない。しかし、インドのコットン農家は、私達が想像するよりも更に貧困で、一日家族を100円で養ってますというのが当たり前の世界だ。特に、インドのコットン農家は、その中でもかなり下層に位置し、非常に貧困な状況下に置かれている。なので、コットンを年に一回収穫して市場で売り、そのお金で一年間生きていくわけだが(二毛作として唐辛子も植えていたりする)、コットンを栽培するにも種が必要で、その種は基本的に借金をして購入している。なので、借金をして種を買ったものの、コットンの収穫が十分に得られず、その借金を返すことが出来ずに自殺をするコットン農家が沢山いる。インドは現在世界最大のコットン生産国。着用しているコットンのTシャツは、このような産業の下支えの上に成り立っている可能性が高い。

BTコットン

2002年には遺伝子組み換え種子(GM種子)の利用が合法化され、BT種子という品種の遺伝子組み換え種子がインドで栽培され始めた。Btとはバチルス・チューリンゲンシス(Bacillus thuringiensis)の略語で、土壌の中に生息している細菌のことである。この細菌は体内で殺虫効果のあるたんぱく質を生成することができるため、この遺伝子を農作物に組み込むことで、農作物を害虫の被害から守ることができるとされている。このBt種子からできたBtコットンは、ワタのつぼみ、花、種子を食べるワタアカミムシ(pink bollworm)という害虫の駆除を目的に生まれた。2020年当時、インドの綿花用地の95%でBtコットンが栽培されているとの調査もある。インドで使用が認められている遺伝子組み換え種子は、バイエル社(旧モンサント社)の販売するBtコットンの種子のみ。

つまり、BT品種とは、国に認められた「殺虫剤入りの綿の品種」ということ。ここで問題が起きる。BT品種で害虫を殺しつつ、コットンを栽培できるようにはなった。一方で、今度は害虫が進化し、BT品種の中の殺虫効果に耐性をもったのだ。すると、今度は、更に最強のBT品種を開発、そして、またそれに耐性を持つ害虫の登場・・・というイタチごっこが開始され、種の中の害虫予防遺伝子も進化させた。そして、無論害虫も進化したゆえ、後から散布する化学肥料の量もさらに増えた。つまり、そこで働く農民たちは、殺虫剤遺伝子入りのコットンを、殺虫剤を大量に散布し育てるという、毒だらけの環境下で農業を行っているということだ。また、皮肉にも、この毒だらけの栽培方法の方が、コットンの収穫量が期待できるため、明日のお金が大事な農民たちは、この栽培方法から抜け出すことが出来ない。

PEACE INDIA COTTON

そこで、私達がやっている有機栽培コットン農法の推進プロジェクト。現在農家との契約数は98農家。弊社が「種」を無償提供し、有機栽培農法を推進、そして収穫物を全量買い上げる。ここまで聞くと、非常に時代にマッチした成功例に見えるが、これをビジネス化するのがこれまた非常に難しい。なぜなら、まだまだ小規模単位のビジネスモデルなので、一個一個の加工や運送にコストが掛かり、どうしても商品単価が高くなってしまうため、デフレマックスの日本の消費者マインドに答えられる価格帯にはならず、最終小売ま中々到達しないのだ。しかし、日本側とインド側で連携し、なんとか昨年から少しずつ商売ベースになり始めている。さて、農家に到着した。農民たちが待っている。これから村に入りますか。

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